『イントゥ・ザ・ワイルド』見てきた

オリジナル・サウンドトラック“イントゥ・ザ・ワイルド”

オリジナル・サウンドトラック“イントゥ・ザ・ワイルド”


「人間アレルギー」という難病に侵された青年の闘病日記。ヒトが沢山いる場所(ロサンゼルスのダウンタウン等)にいると動悸と目眩に襲われるので、地球上で最も人がいない場所の一つであるアラスカで養生することにしたのけれど、その後いろいろと不幸が重なり、最終的に死んでしまうというお話。アラスカを目指す動機は一応色々と語られるものの、何らかの必然や特別の哲学思想の為というよりは「俺アラスカに行かなきゃ死んでしまうの!」という、意思を超えた本能的欲求が根底にあるようだった。気が狂っていたというよりは、人間という存在に対して過敏だったのかもしれない。決して人間嫌いなわけではない、むしろ道程では素晴らしい友情愛情に恵まれている。でも好き嫌いの問題でなく「アレルギー」の為に体が受け付けない……という感じ。

家族、世間のしがらみ、都会の雑踏が嫌になることは誰にもあることであり、そういう意味では誰もが「人間アレルギー」の患者なんだろうけど、ここまでドラマチックな重症患者はそうおらず、結果こうやって映画のネタになった。終盤主人公が「キャリアは20世紀の遺物」と言い放った時、ヒッピーの方がもっと遺物だろと思ったが……90年代になってもヒッピーはアラスカで死に、その物語はベストセラーとなり、太平洋の反対側で映画として上映されているのだから遺物とは言えないかも。ヒッピーカルチャー未だ死せず。

これは中途半端に(金を稼ぐ力という意味でなく、文字通り「生きる力」という意味での)生活力があったが故の悲劇とも言えるかもしれない。俺だったらアラスカでのサバイバル云々にたどり着く前に、旅費を稼ぐためのバーガーキングでのバイトすら満足に勤まらず、クビになり、すごすごと家に戻り、ニートになるだろうから。それなりの信用力がなければ数千万〜数億の借金が作れないように、それなりの甲斐性がなければアラスカでおっ死んで親を悲しませることも出来ない。そういう意味では自分の無能さに感謝しなければらない。