『戦争の経済学』よんだ

戦争の経済学

戦争の経済学

軍事、あるいは経済について新たな知見を与えてくれる本というよりは、私たちが戦争と経済について感覚的に「正しい」と思っている事実について、基本的な経済学の理論と統計に基づき「そうだよ」とか「ちがうよ」とか言ってくれる本だったと言えるか……。

アラブの伝統的な国際金融ネットワーク「ハワラ」について、その詳細を初めて知った。小説の元ネタにできそうな、非常に面白いシステムだと思う。「一回限りのテロは(9.11レベルのものでさえ)経済に長期的なダメージを与えない」というデータは興味深い。似たような事実として一回限りの災害(つまり大地震)も経済的なダメージは意外と小さいという研究結果がある。災害もテロも(影響が)断続的に続くもの(パレスチナでやられてるような小規模な自爆テロ、あるいは洪水・火山噴火)の方が国家、世界経済全体への影響はおっきいということで。

なぜ本書がこれほど面白くて役に立つかといえば、「戦争」と「経済学」という組み合わせが、食い合わせのごとく避けられて来たからだ。この国では特にそうだった。「戦争」と「経済」であれば、ニュースもさんざん取り上げる。いかに戦争が不経済か、我々は耳にたこができるほど聞かされている。しかしそれならなぜ、そんな儲かりもしないことをあれほど多くの人々があれほど熱心に取り組んでいるのだろうか。それを経済学、それも初級の経済学で考察したのが本書である。
404 Blog Not Found:古典x古典=斬新 - 書評 - 戦争の経済学