いのちの食べかた:最高の敬意を払い、皆殺しにしろ。

いのちの食べかた (よりみちパン!セ)

いのちの食べかた (よりみちパン!セ)

リバイバル上映で「いのちの食べかた」観た。
屠場の様子を見ていると、漫画「ジパング」のセリフを改変したくなる。

向こうだって諸君と同じ生命だよ。本能の意のままに動く下等な家畜などとなめてかかるな。彼らも我々と同じように同胞を愛し、家族を愛している。だから彼らに最高の敬意を払い、細心の注意をもって…皆殺しにしろ。

ヒヨコがヒヨコに、豚が豚に、牛が牛に見えなくなる。リンゴがリンゴに、トマトがトマトに見えなくなる。僕はベルトコンベアによる選別を受け、パイプからプラスチックの籠に噴射され、全自動でパッケージングされる数千匹のヒヨコに対して一体どんな「敬意」を払えばいいのか。
「いただきます」と言うことか。目の前のから揚げを残さず食べることか。ベジタリアンになることか。
そんなことで、いいのか。


全てがコントロールされた食の最前線。それを支えるのは「大地と太陽の恵み」「神からの賜物」といったロマンや感傷でなく、数十億人の食料需要を効率的に満たす、という偉大で純粋な目的である。洗練されたシステムは無機質で不気味であると共に、有機的で非常にCOOLだ。

肉牛の体を真っ二つに切り分ける巨大なチェーンソー、鳥が翼を広げるように農薬散布のパイプを伸ばすトラクターを、気味の悪い怪物と見るか、人々の生活の根底を支えるパワーの象徴と見るか。
どちらにせよ、少なくとも一部の金セレブ向けの「エコ」で「ロハス」な有機農場よりも、
オートメーション化が進んだ屠場の方が非常に重要なものに、僕は思えた。