「クローバーフィールド」:悲惨な死こそ至高の死
むかし写真屋でアルバイトをしていたとき、飲み会の写真を現像するのが好きになれませんでした。旅行や結婚式の写真は、焼いてる僕も楽しい気持ちになれるのですが、飲み会なんて端的に言えばアルコールの力を借りて、醜いものを曝け出す会なのですから……縁もゆかりもない外部の人間からすれば、見ていてあまり面白いものではありません。「クローバーフィールド」もある飲み会(送別会)から物語が始まります。その様子はまったく面白くないものです。むしろ大変不快ですらあります。画面に映る人間に、誰一人シンパシーが抱けません。それは多分、作り手の狙い通りです。その後起こる惨劇を、より冷めた視点で観察させる為には必要なシーンなのでしょう。
完成度の高い傑作とは程遠い、宣伝手法からして「ネタ」臭さが否めない「クローバーフィールド」ですが、個人的には大満足です。だって無辜の民が理不尽な死に見舞われる映画が本当に本当に本当に好きだから!!!!!!!!「死」を無闇に美化したり、無意味に意味づけしたりする物語にはヘドがでます。新しいほうの「日本沈没」とか!「アイ・アム・レジェンド」のラストとか!(樋口監督はやっぱり地獄の業火に投げ込まれるべき者だと地上波放送をうっかり再見しておもったよ!)
序盤の映像はまさに9.11そのものでありました。9.11後に作られたSF映画、戦争映画、パニック映画の多くに9.11の影響は見られますが、ここまで「まんま」なのはスゴい。しかし「GODZILLA」といい本作といい、<以下ネタバレにつき反転>クリチャーを大小セットにするのは何かの伝統なのでしょうか?なんか病気を持っているという設定は必要だったのでしょうか?若干疑問が残ります。「2」で解消されて欲しいような、欲しくないような……。ブレア・ウィッチ・プロジェクトもだけど、もっと「緊急事態であるにもかかわらずカメラを手放さない動機」をはっきり理由付けしてほしいです。「映画ですから」で納得するにも限界というものがある!
手ぶれについては、怪獣登場前のシーンのほうが酷かった気が。序盤の店内物色シーンが一番ヤバかった。
無辜の民が理不尽な死に見舞われる映画LIST。特に「宇宙戦争」と「ユナイテッド93」がお気に入り。
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